桐原醸造新聞 2021年05月号
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風薫る五月。
若葉の間を吹き抜ける風をイメージさせるこの表現、とても素敵ですよね。
この「風薫る」という表現は、元々中国語の「薫風」が語源で、それが日本にも伝わり、初夏の風景を表す言葉として親しまれるようになりました。本来は花の香りを表す「薫る」という言葉ですが、実は緑の香りも存在します。若葉や草をちぎってみると薫るあの「緑の香り」を、誰もが一度は嗅いだことがあるのではないでしょうか。その香りは、青葉アルコールと青葉アルデヒドと呼ばれる成分が主体となっており、この香りには人間をリラックスさせる作用があることが科学的に証明されているそうです。森林浴が気持ちいいのには、木々たちが綺麗にしてくれる空気の他にも、こんな理由があったのですね。
そして5月といえば、その気持ちのいい風を受け屋根より高い青空を泳ぐ鯉のぼりです。この季節になると各地で当たり前に見られる鯉のぼりですが、なぜこどもの日に鯉のぼりを飾るようになったのでしょうか。鯉のぼりの由来は、中国の故事「登竜門」で、日本では「鯉の滝登り」として知られている民話だそうです。
「中国の山奥に、大きくて流れの速い『竜門』という滝がありました。その滝を登り切った魚は竜になれると言われ、たくさんの魚が登ろうとしましたが、登りきれる魚はいませんでした。そんな中、唯一滝を登りきった魚が鯉でした。竜門を登りきった鯉は、竜になって天国へ登って行ったそうです。」
普通の魚だった鯉が、皇帝の象徴でもある竜になるという話が立身出世を想像させることから、鯉は縁起物となり、鯉のぼりの誕生につながったそうです。鯉は、沼地や池などの清流以外でも生きられる丈夫な魚であることから、逆光でも頑張り抜ける強い人間に成長して欲しいという願いも込められています。
鯉のぼりには、いくつかの飾りがついていますが、それぞれに意味があります。
鯉の上に飾られている色とりどりの吹流しの青、赤、黄、白、黒の色は「五行説」という考えに基づいています。この世の全ては木、火、土、金、水からできていて、それぞれが影響し合っていると考えられています。
- 青=木
- 赤=火
- 黄=土
- 白=金
- 黒=水
吹き流しは、この世の全てを構成する五行を表すことで、魔除けを祈る飾りです。
ポールの先端についている回転球には、神様に男の子がいる家庭であることを知らせる意味があるそうです。
風車のような矢車は、弓矢をイメージし、破魔矢のように邪悪なものを追い払う飾りです。
すっかり近代化した日本にも、あちこちに魔除けの風習が残っています。時代や季節は移ろいでも、風は今も昔も変わらずに吹き続けています。逆風と捉えるか、うまく風に乗って泳ぐかは、すべて私たちの心の中の風向き次第なのかもしれません。
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